爆風霊峰/立山

爆風霊峰/立山

2020年、ずっと憧れていた富山の名峰・立山に、2回も訪れることができた。
そしてその2度目に、立山の風の洗礼を受けた。
いや、洗礼なんて生易しいものではない。霊峰・立山の爆風攻撃をくらったと言ってもよいかもしれない。

風が強かった山行は利尻岳に書いたが、それを余裕で超える最強クラスだった。


初めての立山は、お盆に家人と。テントを張った雷鳥沢キャンプ場からの絶景には感動した。
涸沢の時も思ったけれど、山に抱かれるってこういうことなんだ、きっと。テントの中から外を覗くと、雄大な立山連邦が私たちの前にどどんとそびえたっている。
しかも、雷鳥沢キャンプ場は室堂ターミナルから1時間半程度。そんなに高低差がないので体力的にも楽だ。温泉あるし、WiFi使えるし、使い放題の水場はあるし、トイレはきれいだし、ということで、個人的に最高のテン場の一つに認定。
まさしく天国のようなところだが、家からとにかく遠いのが唯一の難点だ。

その初回の立山三山縦走時は、ずっとガスっていて稜線からの景色がほぼ何も見えなかったので、そのリベンジを果たしたく、そして天国だった雷鳥沢キャンプ場でもう一度テント泊したくて、二度目は9月初旬にソロで訪れた。
のんびり2泊。とにかくこの雄大な景色を眺めながら雷鳥沢のテント泊を楽しむのが目的だ。

ちなみに余談だが、雷鳥沢キャンプ場は、1泊一張り500円。そして、なぜか2泊目以降は何泊しても同料金。つまり3泊しても4泊しても1000円という神的料金設定。
次回はぜひ3泊以上して何にもしない、をしたい。

ケーブルカーやらロープウェーやら、乗り物を乗り継ぎまくって行くのがどうもおっくうで、お盆の時と同じく、二度目のソロも乗り物が少ない富山側から入ることにした。
初回は家人と交代しながらの運転だったが、ソロなのでドライバーも私一人。(当たり前だ)気合を入れて3時起床で家を出発したが、途中急激に眠くなり、SAで爆睡。どうにかこうにか、立山駅に到着したのは自宅を出てから約6時間後だった。

手前の緑のやつが私のテント。今回は快適さ重視で二人用を持参

 

室堂から歩いて雷鳥沢キャンプ場に到着。初回訪れたお盆の山行から約2週間経っていたが、既に秋の気配が漂っていた。前は夏まっさかりだったのになあ。紅葉には少し早かったみたいだが、たった2週間で季節の移り変わりを感じることができた。

実は雷鳥は夏毛しか見たことない

 

1日目、テントを張ってからちょっとだけ散歩した。ちょっとだけのつもりが、コースを勘違いしていた割とがっつり登ってしまった。雷鳥沢から剣御前までの直登コースだ。剣御前小屋で休憩しつつ、タイムアップ。稜線からはこんな景色だったのか、と感動した。しかも、雷鳥の親子が道案内までしてくれた!いやあ散歩してよかったよかった。

初日の夜ごはんは、メスティンで米を炊きつつ秋刀魚生姜煮丼に舌鼓を打つ。
ここまでが平和だった記憶だ。(ちなみに、この秋刀魚生姜煮丼はこちらの写真生活手帖をどうぞ

そして、爆風の夜がやってきた。
予報で風が強いとわかってはいたけど、とにかく強烈な風の記憶だ。

夜、風のあおりをまともに受けたテント横張の強烈なパンチをくらって目が覚める。
ていうかテントがしなってやばい、必死に抑える。ちょっと威力弱まったかなあ?と思って寝るも、全然弱まらずテントがばっさばっさうるさくて眠れない。
私がテントの中で寝てる限り吹き飛ばされることはないだろうと、うとうと寝るも、2、3時間おきに目が覚める。こんな状況で眠れるわけがない。

ようやく朝になった。起きたら前室に置いていたサンダルがない。近くを探したらほうぼうに吹っ飛んでいた。
テン泊受付タグはどこかに吹っ飛んで行方不明になっていた。
オーマイガー。

2日目、午前中も引き続き強風の予報だったが、やはり午後の雷が怖いので早めに出発。一応、お盆の三山縦走リベンジだ。雷鳥沢から新室堂乗越経由でひたすら登る。
稜線に近づくにつれ、風の威力を肌で感じる。ふっと下から吹く突風に体を完全にハイマツに倒される。

いやいや、風ってこんな恐怖の対象だったっけ?少なくとも下界では多少風が強くてもそんなに影響はない。けれども、山では違う。風がなかったらなんてことない道なのに、稜線、特にやせ尾根はやばい。雷鳥沢からの橋同様、風が弱まったすきにダッシュ。時折ストックで耐風姿勢を取った。無雪期登山なのに!耐風姿勢を取るなんて!しかもストックで(笑)
風が本当にきつくてハイマツに腰かけて休憩していたら、首にかけていた、お盆の立山山行で買ったばかりの雷鳥ちゃん手ぬぐいが吹っ飛んでいった。(くやしいので帰りに同じのを買った)

ふと見たら、日本海に虹が浮かんでいた。風を避けつつ、しばし見とれてしまった。

剣御前小屋まで何とかたどり着くが、もうこの時点で心折れていた。縦走できる気がしない。
おやつを食べつつ、近くにいた他の登山客の話を聞いていると、やはりみんなここから先、別山まで行ってみるものの風が強すぎて縦走を断念する人ばかり。(一部強者は強行していたらしいが)雷鳥沢でテン泊していた女性の財布が吹っ飛んでいて、隣のテントの人が拾ってあげていたらしい。
剣御前、という名前の通り、剱岳がおどろおどろしくそびえていた。何という存在感。カニのタテバイ、カニのヨコバイだっけ。登りたいような、登りたくないような。
おそらく、今の私は剱岳は登らない気がする。だって怖いしね。
2~3年前の、山にがつがつしていた私だったら、ちょっと違ったかもしれないな、とも思う。

おやつは山写真イベント・妄想畔小屋で配ったノベルティのホトリビスコ

 

おやつを食べ終え、トイレを済ませた。剣御前小屋の前は、風が遮られているのかそこまで風の影響を感じず、実は行けるんじゃないか?と思ってちょっと岩山の上に登ってみたが、無理!(笑)今日はここを山頂とする!と動画を撮るも、風が強すぎてばたばたぶれる。
もういいか、と下山した。

下山しながら、私のテントは無事かと目をこらす。平日なのでテントもまばらで、私のテントはあれかな・・・?と目星をつけることができた。多分無事だ。私の不在時に飛んでいかないように、大きい石を3つずつくらい紐にかませたが、戻るまで正直不安だった。下山する、と決めてからはマッハの早さで下り、テントに駆け寄る。私のテント、無事だった!ああよかった。

私を待ってくれていたテント

 

ほっと一息つき、トイレに行ったついでに雷鳥沢キャンプ場管理場のお兄さんと話した。他のテント泊の人の話によると、やはり昨夜の風はすさまじかったらしく、テントのポール折れたとか、穴が開いたとか、そんなのザラだったらしい。テン泊受付タグがなくなりました、すみませんーと伝えるも、ああ、そんなのいいですよーとのこと。というか、テント無事だったの?と言われた。
私のテント、無事だった。撤収時見たらポールが若干曲がってたけど。今回は快適さ優先で二人用のアライテントにしたのだが、改めて君の偉大さを知ったよ。ありがとうアライテントエアライズ。
今回、実はテントを二人用にするかソロの蚕ちゃんハウスにするか迷ったが、アライテントエアライズにした私、グッジョブ。ソロのテント(非自立式)だったら即倒壊していただろう・・・

2日続けて、ロッジ立山連峰の温泉に浸かり、ガリガリ君を食べた。
温泉は最高である。

2日目も夕方になるとだいぶ風もおさまった。テントの中でまどろんでいたら、外から「おお、めっちゃきれいじゃん」という声が聞こえ、外に出てみた。

うわあ・・・と思わずため息をつく。
雷鳥沢の空が、真っ赤に燃えていた。
三山縦走は断念せざるを得なかったけど、こんなに美しい景色が見られた。
山って本当に、飴と鞭だ。ツンデレだ。なんなんこれ。反則だわ。

3日目の朝を迎えた。

昨夜は、嵐のような初日夜とは全く違ってとても静かで、おかげでぐっすり眠れた。夜、どうやら雨が降っていたようで、テントの周りに生えている草花たちに雫がついている。それらが、朝日を浴びてキラキラと輝いていた。

私は夢中でシャッターを切った。なんて美しいのだろう。昨日の夕焼けも美しかったが、こいつらも負けていない。
山はいつだって、普段気がつかない自然の美しさを思い出させてくれる。
そしていつもは忘れている自然の脅威も。
もう、爆風はごめんこうむりたいけれども。

立山(3015m)

立山(たてやま)は日本の飛騨山脈(北アルプス)北部、立山連峰の主峰で、中部山岳国立公園を代表する山の一つである。雄山(おやま、標高3,003 m)、大汝山(おおなんじやま、標高3,015 m)、富士ノ折立(ふじのおりたて、標高2,999 m)の3つの峰の総称である。雄山のみを指して立山ということもあるが、厳密には立山連峰に立山と称する単独峰は存在しない。剱岳とならび、日本では数少ない、氷河の現存する山である。(出典:Wikipedia)

≪コースタイム≫
1日目
室堂→雷鳥平→別山乗越(剣御前小屋)→雷鳥平
歩行時間  4時間25分
歩行時間 6km
最大高低差 771m

2日目(大汝山~雄山と縦走予定が風のため断念)
雷鳥平→新室堂乗越→別山乗越(剣御前小屋)→雷鳥平
歩行時間  2時間
歩行時間 4.5km
最大高低差 553m

3日目
雷鳥平→室堂
歩行時間 35分
歩行時間 2km
最大高低差 225m

≪アクセス≫

基点となる室堂までは、立山黒部アルペンルートという山岳観光ルートで入る。
富山県側の立山町「立山駅」からか、長野県側の大町市「扇沢駅」のいずれかからとなる。

富山県側の立山町「立山駅」から長野県側の大町市「扇沢駅」

●富山側・立山駅からの場合
立山駅~美女平(立山ケーブルカー)→室堂(立山高原バス) 約1時間

●長野県側・扇沢駅からの場合
扇沢~黒部ダム(電気バス)→黒部湖(徒歩)→黒部平(ケーブルカー)→大観峰(ロープウェイ)→室堂 約1時間

※アクセス・詳細はこちらのサイトをご覧ください。

立山黒部アルペンルート アクセス

 

The Japan Alps サイト内 室堂アクセスページ