占い師の助言
時は中国・明の時代、広東省・開平。
この地に住むとある金持ちが、海外で一財産を築き、故郷に帰還した。彼は財産を盗賊に強奪されるのをひどく恐れた。また、この地は度重なる水害に襲われ、そのたびに農作物や彼らの金銀が流された。
金持ちは、もうこれ以上財産が失われることのないように、堅硬な建物・碉楼(ディアオロウ)を建てることにした。その時伺いを立てたのが有名な占い師だ。
「占い師よ、我の財産を守るには、どのような建物にするべきか」
占い師は答えた。
「水が襲ってきても何も奪われないように、嵩高くせよ」
「高くすれば、それで安心なのか」
「盗賊を追い返すための見張り用の塔と、人の住む塔を分けるべし」
「ほかに注意すべきことはあるか」
占い師は呆れながら答えた。
「おぬしは財産を守るために塔を建てるのであろう。塔を建てる目的がそれのみであれば、それ以上こだわることもあるまい」
金持ちは憤慨した。
「せっかく建てるなら、周囲から称賛される前衛的なデザインの塔にしたいと考えているのだ」
占い師はため息をついた。
「そんなにかっこつけたいなら、我が国・明の伝統に、西洋の国々の要素を取り入れるとよいだろう。ローマやイスラムなどの飾りもワンポイントで入れてみよ」
見栄っ張りで承認欲求の強かった金持ちが占い師の提案を受け入れたことで、現在世界遺産となっている自力村の高層楼閣ができあがったという。
うそかまことか、誰も知らない。
自力村/中国・開平
中国・広州の開平市内から車で約1時間のところにある自力村。世界遺産に指定されているこの村は、のどかに広がる田んぼに、ぽつんぽつんと突き出るようにそびえ立つちょっと不釣り合いな建物が何ともフォトジェニック。西洋と中国の特徴がミックスされたこれらの建物は「ディアロウ」と呼ばれ、水害と匪賊による被害を防ぐ目的で作られた。
中華人民共和国 広東省 江門市 開平市
广东省江门市开平市
≪アクセス≫
○開平バスターミナル(長沙)からバスで約30分
自力村入口バス停から自力村まで徒歩30分
○日帰りツアーもあり