あゝ充電/尾瀬

あゝ充電/尾瀬

携帯の充電器を忘れてきた。

首都高に乗るなり唐突にそのことを思い出した。充電器が入ったポーチをザックに入れた記憶がない。
しまった。のっけから重大なミスを犯してしまった。

この日は梅雨入り前の平日。水芭蕉が見ごろの尾瀬でソロテン泊しようと出発した矢先だった。
まだ高速に乗ったばかりでぎりぎり引き返せる距離だったが、面倒になり却下。
途中で充電器を忘れた悲報を夫にLINEで送った。すると、「サービスエリアで売っているはず」とのこと。

そうか!なるほど、途中で予備を買えばきっと何とかなる。

次のサービスエリアにさっそく立ち寄り、売店をのぞくとあった!乾電池式の充電器。
USB充電のタイプに比べてずっしり重いが、文句は言うまい。あーよかった。これで携帯充電問題は解決した。はずだった。

首都高から関越に入り、渋滞もなく順調に走って尾瀬戸倉の駐車場に到着した。
登山口は鳩待峠だが、マイカー規制でこれ以上はバスもしくは乗り合いタクシーとなる。
少し待ったが、比較的すぐに乗り合いタクシーに乗ることができ、20~30分ほどで鳩待峠に到着した。
到着してびっくりした。なんだこの祭り並の賑わいは!平日のはずだが、シーズンの尾瀬を楽しもうとするツアー団体(大体クラ○ー、客層は中高年)で鳩待峠はかなりにぎわっていた。トイレを済ませて出たら、ツアー団体が広がって柔軟体操を始めている。この人たちが出発する前に何としても先を越さねばなるまい、と自分の柔軟体操はそこそこに、鳩待峠を出発した。

6月の尾瀬は、雪解け水であちらこちらびしょびしょだ。この雪解け水こそが、尾瀬に咲く花々を芽吹かせ、生き物たちの命をつなぎ、季節を巡らせているのだ。水場に顔をのぞかせている水芭蕉を見かけて心の中で歓声を上げる。前方には燧ケ岳、後ろを振り返ると至仏山。あちらこちらに生まれている池塘、その水面に映し出される彼らの姿も風情があり、実に美しい。

今日はテン泊なので時間的余裕もあり、しかも尾瀬を散策するだけなのでそこまでハードな山行ではない。急がないのんびり山行は精神的に楽だし、気分も上がる。
最初に訪れた尾瀬は秋で、しかも台風前日で荒天だったにも関わらずその美しさに感動したが、この、これこそザ・尾瀬のベストシーズンと呼べる風景もやはり素晴らしい。夏が来ーれば思い出す♪ はるかな尾瀬♪ 遠い空♪  そんな歌が頭の中でこだまする。

思っていた以上に暑く、ちょっとバテ気味になりつつも、テン場の見晴に到着した。ほどよく広く、そこそこ樹木も生えていて、地面は土でふかふかだ。幕営の受付をする燧小屋には、なんとお風呂もある。見晴、なかなか至れり尽くせりなテン場である。
風呂あがりに燧小屋でチューハイを買い、しばしスマホタイムである。電波がぎりぎり入るのが燧小屋周辺だったので、風呂後はテントに戻らず、小屋のベンチに座ってずっと携帯をいじっていた。ソロだと話し相手もいなくて暇なので、撮った写真をinstagramにUPしたり、Twitterにあれこれつぶやいてみたりして時間をつぶす。SNSをやりつくした後はテントに戻り、持参した雑誌(むろん山関係)をぱらぱら眺める。あー至福だ。明日別に厳しい山に挑むわけでもない、このリラックス感。いい。テン泊は時には緊張感を持ち、時には今回のように終始だらけていてもよいのかもしれない。


写真はこのテン泊で作ったみそ焼きそば。こちらについてのコラムは「写真生活手帖」からもどうぞ>>>

雑誌をほぼ読みつくした。スマホの電池残量は15%になっている。でも大丈夫。私にはSAで買った充電器があるもんね。と、いざ充電しようとしたら、あれ?刺さらない。この時点で結構酔っぱらっていて、悪戦苦闘。なぜ刺さらないのか理解するのに10分以上かかった。
そして、理由が判明した。なんと、付属のコードはiPhone対応じゃないっぽい。マジかい!!!!!!どうやら私は、iPhone用ではないスマホ充電器を意気揚々と買っちまったらしい。あゝ、充電ができない。
繰り返すが、iPhoneの電池残量は残り15%。明日は特に山に登るわけでもなく、来た道を鳩待峠まで帰るだけだから、道迷いの心配はそこまでないだろう。そこまで早朝に起床しなくてもよいので、とにかく無駄な電池を使わないように、アラームもOFFにし、立ち上げていたアプリを全て消して就寝した。
そして翌朝、起床したら電池残量は9%になっていた。
一応、登山アプリYAMAPのログは再開し、歩いている間、携帯は見ずにひたすらもくもく歩き(カメラで写真は撮っていた)、やっとこさ鳩待峠に到着した。
YAMAPのログを止めようとしたら、なんと電池残量が1%という表示!
祈るような気持で保存ボタンを押し、しばらくしたらついに画面が真っ黒になった。
私のスマホが力尽きた。南無阿弥陀仏。
車に戻るまで充電できないのでやきもきしたが、戻ってさっそく見てみると、YAMAPのログはちゃんと保存できていた。私のiPhone、最後の力を振り絞ってくれた!!拍手喝采雨あられ!ありがとうiPhoneちゃん!
なんだか、この時は私のiPhoneが命を持った仲間のように思えた。ほんともーしょうがねーな、次はちゃんと充電器忘れないでよ。とかなんとか、言われていたかもしれない。

正真正銘、100%自業自得で、尾瀬散策だけだったのでまあ問題なかったが、山の中だったらGPSが見れないのはかなりの痛手だ。地図を見て登れば不要だと思われる方ももちろんいらっしゃると思うが、紙の地図は一応持っているけど私は山のデジタルネイティブ。(すいません言ってみたかっただけです)
あゝ充電。携帯の充電が出来ないのは致命傷。肝に命じます。
そして感謝を捧ぐ。ありがとうiPhone。

尾瀬(854m)

尾瀬は日本有数の高層湿原で、尾瀬ヶ原で標高1,400メートル、尾瀬沼で1,660m。
広大な国立公園内は中央に燧ケ岳がそびえ、その南側に尾瀬沼、大江湿原が、西側 には東西6キロ南北2キロの広大な尾瀬ヶ原が広がり至仏山へと続く。(尾瀬檜枝岐温泉観光協会サイトより)
今回テント泊したのは鳩待峠から山の鼻、尾瀬ヶ原を経由してちょうど中間らへんにある見晴キャンプ場。

≪コースタイム≫
登山口(鳩待峠)→山の鼻→見晴
歩行時間 登山口→見晴 2時間50分
歩行時間 8.9km
最大高低差 234m

≪アクセス≫

詳しいアクセスはこちらのサイトなどを参考にしてください>>>

〇鳩待峠まで

マイカーアクセス(マイカー規制のため尾瀬戸倉からバスまたは乗り合いタクシー)
・尾瀬第一駐車場(戸倉) : 収容台数 280台
・尾瀬第二駐車場(戸倉) : 収容台数 250台
・スノーパーク尾瀬戸倉駐車場 : 収容台数 500台
・大清水駐車場 : 収容台数 100台
・鳩待峠駐車場 : 収容台数 50台
・富士見下駐車場 : 収容台数 30台
・御池駐車場 : 収容台数 420台

東京から電車・バス利用
・東京~上毛高原(上越新幹線)
・上野~沼田(上越線)
・浅草・新宿~会津高原尾瀬口

東京からバス利用
・新宿~大清水・戸倉(直通高速バス)