島のアジト

島のアジト

この島で石炭産業が最盛期を迎えていた頃、人の数はもちろん今より多かった。

大人も、子どもも、この島での生活を謳歌していた。
小学校にはたくさんの児童が通い、ボウリング場やスナックなど、大人のための娯楽施設も多かった。今となっては昔の話。

石炭産業が衰退していくと、そこで働く人間たちのために建設されたあちらこちらの団地が、どんどん空き家になっていった。
となると、彼らが黙っちゃいない。

今やこの島の団地は、彼らがアジトとして占拠しているのである。

正確に言うと、100%ではない。まだ人間たちが住む居住区が残っている。しかも、テレビでこの島が紹介されたものだから、割と観光客も訪れる。
彼らの楽園となるまであと1歩のところまで迫っているのだが、まだ完全征服とは言えない。
人間もまだまだしぶといな、と彼らは思っている。

彼らは夜な夜な集会を開きながら「いかにしてこの島を占拠するか」というテーマについて議論している。
しかも、「とはいえ人間たちが完全にいなくなってしまったら、我々のおまんまも食い上げだ」という問題も同時に発生するため、議論はいつも白熱し、結論は出ないまま集会が終わる。

 

 

池島/長崎

現在進行形で廃墟化している有人の島。全長4キロほどの小さな島なので、自由に歩き回れる。宿泊施設や食堂(おばちゃんの、1軒だけ)もある。

≪アクセス≫

○長崎駅からバス(45分)桜の里ターミナル→バス(35分)→神の浦(こうのうら)→バス(15分)→大瀬戸→フェリーで30分

○佐世保から高速船で1時間

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